PMSMにおける一般的なセンサレス制御の考え方
PMSMのセンサレス制御手法は様々提案されているが,一般的にセンサレス制御の考え方は下図に集約されている.
このブロック線図は,PMSMの実機速度\( \omega \)からコントローラ内で演算される位置推定値\( \hat{\theta}\)までの図である.
実機回転子位置\(\theta\)は,\(\omega\)の時間積分で表すことができる.
\(Q(s)\)は,実機における位置\(\theta\)と,\( \hat{\theta}\)との間に発生する誤差の真値\(\Delta \theta\)を推定するオブザーバで,この推定値を\(\Delta \hat{\theta} \)とする.
\(G_{\rm c}(s)\)は位相同期制御器であり,\(\Delta \hat{\theta} \)をゼロにするように出力を制御する.
その出力は速度推定値\(\hat{\omega}\)であるが,これを積分することで,位置推定値\(\hat{\theta}\)が得られる.
さて,このシステムの目標は,\(\Delta \theta\)をゼロに収束させることであるが,\(\Delta \theta\)を出力とし,速度が一定であるとすると,
$$\Delta \theta = \dfrac{1}{1+\dfrac{1}{s}G_{\rm c}Q}\cdot \dfrac{\theta}{s} = \dfrac{1}{1+\dfrac{1}{s}G_{\rm c}Q}\cdot \dfrac{\omega}{s^2} $$
で与えられる.ここで,\({ \displaystyle \lim_{t\rightarrow +\infty} \Delta \theta(t) = 0}\)とするためには,最終値の定理より,
$${\displaystyle \lim_{s \rightarrow 0}}s\cdot \Delta \theta = \dfrac{\omega}{s+G_{\rm c}Q}$$
なので,\(G_{\rm c}Q\)に積分器が1つ以上あればよい.
加速時も位置誤差をゼロに収束させたい場合は,同様に考えると,\(G_{\rm c}Q\)には積分器が2つ以上必要になる.
このように考えると,一般的なフィードバック制御理論が適用できることがわかる.