パワエレ学生の備忘録

電気電子,パワエレ(特にスイッチング電源やモータ),制御工学や趣味に関すること,を赴くままに綴る,便所の落書きのようなところ/保有資格:第三種電気主任技術者,第一種電気工事士

出力電圧検出のA/D変換で気をつけるべきこと

 DC-DCコンバータは3.3Vと低電圧なものもあれば,45Vや100,200V以上の高電圧まで非常に幅広い.通常,DC-DCコンバータを制御するには,出力電圧を検出する必要がある.検出レンジがでかいまま,ただ何も考えずにマイコンに接続すると破損するので,分圧抵抗で電圧を落としてからA/D変換に入れる.

 また,パワー部は強いノイズにさらされているので,フィルタを通すことが普通である.したがって,分圧回路はストレートに考えた場合,このフィルタ部を含めると下図のようになる:

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LPF付き分圧回路

 LPFはRとCのセットで機能するが,この回路では,分圧抵抗がRの成分を持っているので特別追加する必要はない.

 一方で出力側(\(V_{\rm o_det})にはA/D変換器がぶら下がっている.TI社から供給されているTMS320F2837xSより,A/D変換器の回路は,下図のようになっている:

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A/D変換回路

 図からわかるように,A/D変換回路には入力キャパシタ\(C_{\rm p} = 12.9\ {\rm pF}\)※,S/H回路スイッチ抵抗\(R_{\rm on} = 425\ {\rm \Omega} \),S/Hキャパシタ\(C_{\rm h} = 14.5\ {\rm pF}\)が存在する.\(R_{\rm s}\)は,等価入力抵抗で,これはユーザが設定する.

※値はポートによって違う.詳細は参考文献のデータシート参照

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入力キャパシタの値

 以上より,出力電圧を検出してからS/Hキャパシタ電圧まで2段のLPFが構成されていることがわかる.

 マイコンに実際取り込まれる値は\( C_{\rm h} \)に印加される電圧であるから,以上の回路をまとめると下図のようになる:

 

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ADCを含めた検出回路

 実際にこの回路を回路シミュレータPSIMのACSweep機能を用いて周波数特性を解析した結果,下図のようになった:

 

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検出回路+ADCの周波数特性

ただし,サンプリング周波数は100kHz,ホールド時間は75nsecとし,用いたパラメータは次の通り:

Component Value
High-side resistor RH 51
Low-side resistor RL 2.2
Filter capacitor Cf 1.5 nF
Parallel capacitor Cp 12.9 pF
ON resistor RON 425 Ω
Hold capacitor Ch 14.5 pF

(表が貧弱すぎるので後々改善する) 

 

 分圧+LPF回路のカットオフ周波数は設計上,50kHzであった.しかし,A/D変換回路を含めたf特を見ると,それよりやや低い30kHzになっていることがわかる.

 サンプリング周波数当たりでゲインがバウンドしているのは,ディジタルフィルタ特有のもので,折返し雑音によるものである.また,バウンドがあまりキレイでないのは,ACSweepのサンプル数が少ないことが原因...

 いちいちシミュレーションにかけるのが面倒であれば,素直にバッファアンプを用いることが手っ取り早い.ただし,100kHzオーダ以上になるとアンプ自体の特性も考慮しなければいけないので,時間とコストを考慮して使い分ける必要がある.

 

参考文献

TI社,TMS320F2837xS Delfino™ Microcontrollers datasheet (Rev. G),2018,2019/11/24閲覧

http://www.ti.com/lit/ds/symlink/tms320f28377s.pdf

 

sim.okawa-denshi.jp