パワエレ学生の備忘録

電気電子,パワエレ(特にスイッチング電源やモータ),制御工学や趣味に関すること,を赴くままに綴る,便所の落書きのようなところ/保有資格:第三種電気主任技術者,第一種電気工事士

EVに応用するワイヤレス給電の現状

ロームからつい3ヶ月ほど前に,こんな記事が出てきた:

www.rohm.co.jp

モータとホイールと電力変換装置がすべて一体になった,「走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」の新世代が出来たらしい.

実際に現物を見たいが,機会がない.凸したら見せてもらえるのかしら?

 

この記事でワイヤレス給電IWMを知ったけど,これまでは定格が軽自動車クラスだったのに対して,今回は普通自動車クラスになったとか.

2025年に実証実験やるって書いてあるけど,どのレベルでできるんやろ.どっかに実験場作って走行テストなのか,公道でやるのか.

公道は,現状の道路を剥がさないとだめだから,実験場レベルやろなぁ.

 

そういえば,トヨタのWoven cityみたいな大規模な実証実験施設ができるらしい.見たところ,自動運転とか都市計画が主なテーマみたいやけど,こういうパワエレ技術の研究も大々的にやってほしい.
global.toyota

 

モータ系の勉強を始めて,こういった記事が目につくようになったけど,あちこちでアツい研究してるので,近々に技術展に参加してみたいなぁなどと.

DC-DCコンバータの周波数特性測定【\(G_{\rm vd}\)編】

(非絶縁)降圧型DC-DCコンバータにおけるプラントの伝達関数\( G_{\rm vd}(s)\)のFRAを測定した.

 回路定数は,

\(V_{\rm i} = 12\ {\rm V}\),\(F_{\rm m} = 0.2\),\(f_{\rm s} = 100\ {\rm kHz}\),\(L=78.42\ {\rm \mu H}\),\(r_{L} = 260\ {\rm m \Omega}\)(実測値),\(C=180.47\ {\rm \mu F}\),\(r_{C} = 100\ {\rm m\Omega}\)(\(C\)は理論値,\(r_{C}\)は推定値)

キャパシタは180uFの電解コンと0.47uFのフィルムコンをパラ使いしている.

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低電圧におけるGvdの周波数特性
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二輪車の電動化について

 近年,ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に注目が集まっているが,二輪車についてはあまり話題に上がらない.

 テレビ東京の番組「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」で使用されているバイクは電動のものであるが,50cc相当のもので(手軽に乗れるという点が番組にとって都合がいいのだろうが),これ以外に電動バイクがCMやテレビ,その他メディアで取り上げられることは殆どない.

 自動車に比べてバイクはなぜ電動化が進まないのか.単に需要の問題なのか,それとも技術的に障壁があるのか.

www.tv-tokyo.co.jp

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出力電圧検出のA/D変換で気をつけるべきこと

 DC-DCコンバータは3.3Vと低電圧なものもあれば,45Vや100,200V以上の高電圧まで非常に幅広い.通常,DC-DCコンバータを制御するには,出力電圧を検出する必要がある.検出レンジがでかいまま,ただ何も考えずにマイコンに接続すると破損するので,分圧抵抗で電圧を落としてからA/D変換に入れる.

 また,パワー部は強いノイズにさらされているので,フィルタを通すことが普通である.したがって,分圧回路はストレートに考えた場合,このフィルタ部を含めると下図のようになる:

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LPF付き分圧回路

 LPFはRとCのセットで機能するが,この回路では,分圧抵抗がRの成分を持っているので特別追加する必要はない.

 一方で出力側(\(V_{\rm o_det})にはA/D変換器がぶら下がっている.TI社から供給されているTMS320F2837xSより,A/D変換器の回路は,下図のようになっている:

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A/D変換回路

 図からわかるように,A/D変換回路には入力キャパシタ\(C_{\rm p} = 12.9\ {\rm pF}\)※,S/H回路スイッチ抵抗\(R_{\rm on} = 425\ {\rm \Omega} \),S/Hキャパシタ\(C_{\rm h} = 14.5\ {\rm pF}\)が存在する.\(R_{\rm s}\)は,等価入力抵抗で,これはユーザが設定する.

※値はポートによって違う.詳細は参考文献のデータシート参照

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入力キャパシタの値

 以上より,出力電圧を検出してからS/Hキャパシタ電圧まで2段のLPFが構成されていることがわかる.

 マイコンに実際取り込まれる値は\( C_{\rm h} \)に印加される電圧であるから,以上の回路をまとめると下図のようになる:

 

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ADCを含めた検出回路

 実際にこの回路を回路シミュレータPSIMのACSweep機能を用いて周波数特性を解析した結果,下図のようになった:

 

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検出回路+ADCの周波数特性

ただし,サンプリング周波数は100kHz,ホールド時間は75nsecとし,用いたパラメータは次の通り:

Component Value
High-side resistor RH 51
Low-side resistor RL 2.2
Filter capacitor Cf 1.5 nF
Parallel capacitor Cp 12.9 pF
ON resistor RON 425 Ω
Hold capacitor Ch 14.5 pF

(表が貧弱すぎるので後々改善する) 

 

 分圧+LPF回路のカットオフ周波数は設計上,50kHzであった.しかし,A/D変換回路を含めたf特を見ると,それよりやや低い30kHzになっていることがわかる.

 サンプリング周波数当たりでゲインがバウンドしているのは,ディジタルフィルタ特有のもので,折返し雑音によるものである.また,バウンドがあまりキレイでないのは,ACSweepのサンプル数が少ないことが原因...

 いちいちシミュレーションにかけるのが面倒であれば,素直にバッファアンプを用いることが手っ取り早い.ただし,100kHzオーダ以上になるとアンプ自体の特性も考慮しなければいけないので,時間とコストを考慮して使い分ける必要がある.

 

参考文献

TI社,TMS320F2837xS Delfino™ Microcontrollers datasheet (Rev. G),2018,2019/11/24閲覧

http://www.ti.com/lit/ds/symlink/tms320f28377s.pdf

 

sim.okawa-denshi.jp

 

 

台形波変調もしくは三次高調波注入変調

図のような三相交流インバータがある.

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三相インバータの回路図

 上図から分かるように,各相電圧は\(1/2E_{\rm d}\)を超えることができない.実効値換算すれば,\(  1/(2\sqrt{2})E_{\rm d}\)この時,どの程度直流電圧が利用できているかを表す直流電圧利用率を下記で定義する.

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多相スイッチング電源である相だけ停止させる方法

 研究でマルチフェーズ方式のDC-DCコンバータについてやってるので,変わったテクニックの備忘録.

 マルチフェーズ方式では,負荷の状況に応じて,相数を切り替えることで低負荷でも高効率で駆動することができる.切り替える方法は,スイッチング素子をゲートロックすることが一番手っ取り早い.

 ただし,同期整流の場合は注意すべきポイントがある(非同期の場合は問題にならない).

 今回は,TI社が供給するマイコンC2000シリーズTMS320F28377SのPWM機能でゲートロックさせる方法を紹介する.

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TMS320F28377S(www.tij.co.jpより)
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【解析力学】汎関数問題について

 汎関数は,

$$F = \int_a^b f(x,y,y')dx$$

で定義される\(F\)のことをいう.汎関数は物理,特に力学に関する問題を解くのに有益で,例えば最速降下曲線問題に有効である.

 一方で,汎関数問題は,解析力学を学ぶ上でつまずくポイントでもあるので,雑多ながらまとめておく.

 まず,汎関数の性質について解説する前に,汎関数が必要になる例を紹介する.

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