【古典制御】安定判別法 番外編(偏角の原理アニメーション)
Nyquisの安定判別法で登場した,偏角の原理について説明するアニメーションを作成した.
対象となる極と零点を囲むような曲線上に沿って,変数を変化させたときの写像の振る舞いを示すものになっている.
参考までに,偏角の原理をおさらい:
偏角の原理
\( C\)を複素閉右半平面\( \mathbb{C}\)内の区分的に連続微分可能な単純閉曲線であり,反時計回りの方向に動くものとする.
このとき, \( C\)の内側にある\( f\)の零点および極の個数を, 重複するものも数えてそれぞれ\( N, P\)とする.
また,\( f\)は \( C\)上で極も零点も持たないとする. このとき,
$$ \oint_{C}\frac{f'(s)}{f(s)}ds = 2\pi j(N-P) $$
が成り立つ.
例えば,
$$w(z) = \frac{1}{z-(1+j)}$$
なる写像が与えられ,\(z\)は\(1+j\)を囲むような経路(例えば,\(1+j\)を中心とした円)を反時計回りにたどったとき,\(w\)は,原点を中心にして1回だけ時計回りに回るはずである.
これを,下記のgifを見て確認しよう:
(左:z,右写像w(z))
確かに極の周りを反時計回りに一回回ると,その写像は原点周りを時計回りに一周していることがわかる.
次に,零点を回る様子を見てみよう.
続きを読む【古典制御】安定判別法①(安定とはなにか)
制御工学,特に古典制御で取り扱うシステムはLTIシステムの下図に示すようなフィードバック制御系であるが,中でも
- 安定性
- 速応性
- 外乱抑圧性
- ロバスト性
などが議論の対象となる.
特に安定性については様々な安定判別法が提案された.現在でも使われている安定判別法は,
- Routh–Hurwitzの安定判別法
- Nyquistの安定判別法
- Bodeの安定判別法
が挙げられる.Routh-Hurwitzはシステムを数値計算で判別する方法であるのに対して,Nyquist,Bodeは図的に判別する方法である.
Routh-Hurwitzは別の機会に取り上げるとして,今回はNyquistの安定判別法について取り上げる.
記事の構成は数回に分かれ,次のとおりである.
- 古典制御で議論する安定について厳密に定義し,システムの伝達関数を評価することで安定を判別できることを明らかにし,安定であるための条件をLaplace変換の結果より示す.
- 閉ループ伝達関数の性質より,特性方程式を評価するだけで安定が判別できることを示し,複素解析を用いて,Nyquistの安定判別法を証明する.
- 虚軸上に極や零点がある場合の処理方法を解説する.
- Nyquistの安定判別法で用いた補題を証明する.
1年総まとめ
今年は去年とは違った形で慌ただしかった一年でした。
去年は退職に関する面談、手続き、移動などありましたが、今年は2種類のバイトをこなしつつ、学校で日々の授業に研究といった日々を送っております。サラリーマンとは全く違う忙しさですが、特にプレッシャーにやられるといったこともなく、快適に過ごしています。
学校では、高専本科のころからやりたかった電力変換器の制御技術に関する研究に取り組んでおり、国際学会でのポスターセッションに参加したり夏期休暇中にTIAパワエレサマースクールを受講したり、いい経験になったと思います。
一方で進路について、今非常に悩んでおります。
退職当初は高専教員になることが目標だったので、まず間違いなく院には行くべきだろうと考えていました。ところが、研究する中で、高専教員になることがどれほど大変なことか、若手の高専教員がどれほど苦労しているかを思い知らされます。
博士を取るまでに研究者としての経験、実績を積み上げ、その一方で大きな時間と費用を対価に払いますが、高専教員は若手はそれほど好待遇を受けるわけでなく(研究環境については良いことがある)、雑用を山ほど投げられ、講義・実習を担当し、研究実績もあげねばなりません。
実家を放ったらかしにし、自分の人生はしばらく(少なくても10年)自分のものにできるのであれば全く問題なく、貸与型奨学金を借りてでも進学したいぐらいの意欲はあります。
ただそうもいきません。最近ワイドショーで住宅ローン問題の特集を見ました。家を2000万3000万で購入し、ローンで返すのが一般的ですが、計算上は75歳ぐらいまで毎月10万前後を払い続けなければなりません。これに日々暮らしていくだけの生活費に加え、老後に向けた貯蓄、車が壊れれば車の買い替えなど出費が続きます。さらに、30歳から75歳までの間、何事もなく稼ぎ続けることができれば問題ないのですが、ピックアップされたのが、途中でこれまでの収入が得れなくなった場合です。こうなったとき、ローンの返済が難しくなるだけでなく、日々の貯蓄も難しくなります。結果、マイホームを失うだけでなく、少ない蓄えで、精算した住宅ローンの支払いを続けながら、老後の不安を抱えたまま生きていくことになります。
実はこの問題、我が実家でも他人事ではなくて、親父は私が高専を卒業する直前に一度退職しているのです。理由は今でもよくわかっていません(多分なんとなく)が、その後職を転々とし、今、以前ほどではありませんがなんとか母や私(貯蓄を崩しながら)、妹の頑張りでなんとかなっています。ただ、貯蓄は一切できていないのが実情です。
また、直近で解決すべき問題もあります。実家の車は祖母が一括で購入してくれたものなので現在両親が維持費のみで乗れています。しかし、その車ももうすぐ20万kmを迎えようとしており、いよいよガタが来ています。そうなった場合、車を買い換えなければならないのですが、そのような余裕はありません。じゃあ車無しで生活できるか。田舎での車無しは本当に死活問題です。
上記のため、私は進学ではなく、就職にもう一度舵を切ることを検討しています。私はこれらの問題を解決するための現実的な手法は就職以外に思いつきません。
また、修士で出てできるだけ高い報酬を狙うことも考えましたが、いまいちピンとくる大学院がなく、そうまでして2年の期間と費用をかける必要があるのかと考えてしまいます。
そこで今は就活の準備を進めています。また、なにか良い解決策を思いつくかもしれないので、進学もできるようにもしています(推薦になれば成績が大きなウェイトを占めるほか、研究業績も評価されるかもしれないため)。
結果、4足のわらじを履くことになりましたが、1月2月までは考える期間にしたいとおもっています。
地絡検出②EVTの動作原理
前記事(地絡検出①ZPDの動作原理 - 便所の落書き)にてZPDの動作原理を解説しました.今度はEVTについて紹介します.
EVTとは正式には,接地計器用変圧器(Earthed Voltage Tran-sformer)と言い,ZPDと同じく,地絡検出を目的に使用されます.
EVTの動作原理
考え方自体はZPDと全く同じです.三相交流平衡電源の対地電圧は全相健全であればそのフェーザの総和は零になる,という零相電圧の考え方です.すなわち,
$$\sum e = e_{uv} + e_{vw} + e_{wu} = 0.$$
EVTは下図のように接続して使用されます.
はそれぞれ,と電磁結合していて,変圧器になっています.
このように,2次側を直列に接続することによって,には零相電圧が発生します.
一線地絡時,例えばU相が地絡した場合,その等価回路は下図のように描き直すことができます.
U相のEVT1次巻線は短絡されることになり,電圧は印加されないことになります.従って2次巻線に電圧は発生せず,にはV,W相の電圧のみが加算されます.したがって,総和が非零になります.
この時のにはUV,UW相の対地電圧が印加されることになります.つまり,
となり,
なので,巻線比をとすると,
と計算できます.