台形波変調もしくは三次高調波注入変調
図のような三相交流インバータがある.
上図から分かるように,各相電圧は\(1/2E_{\rm d}\)を超えることができない.実効値換算すれば,\( 1/(2\sqrt{2})E_{\rm d}\)この時,どの程度直流電圧が利用できているかを表す直流電圧利用率を下記で定義する.
\(V_{o1}\)を,出力線間電圧の基本波実効値とするとき,直流電圧利用率\( \delta_{\rm DC}\)は,
$$ \delta_{\rm DC}=\frac{V_{o1}}{E_{\rm d}}$$
で与えられる.
ゆえに,インバータの指令電圧に基本波をそのまま与えた場合,
$$ \delta_{\rm DC} = \frac{\frac{\sqrt{3}}{2\sqrt{2}}E_{\rm d}}{E_{\rm d}} \simeq 0.612$$
ここで,基本波に対して振幅1/6倍,周波数3倍の正弦波を重畳させる.すると,下図のようになる:
また,UVW相で描画すると,
となる.このとき,基本波と三倍派を重ね合わせた最大振幅値は基本波に比べて\( \sqrt{3}/2\)となる(微分して調べれば分かる).
したがって,このとき,
$$\delta_{\rm DC} = \frac{V_{o1}}{E_{\rm d}} = \sqrt{\frac{2}{3}}$$
となる.基本波のみのときと比べて直流電圧利用率が上がっていることが分かる.
ただ,この相電圧のまま出力されると高調波が乗ったままとなるが,実際の出力は線間電圧であるので,三倍波は打ち消し合い,基本波のみが出力される.
ちなみに,この方式は重ね合わせた波形が台形っぽいことから台形波変調とも言われている.
参考文献
電気学会技術者教育委員会パワーエレクトロニクス教育 WG,第5回パワエレ・セミナー「テーマ2:PWMと電流制御」,2015,2019/11/20閲覧
https://www.iee.jp/wp-content/uploads/honbu/31-doc-honb/power-ele-5th_report.pdf
辻峰男,パワーエレクトロニクスと電動機制御入門,2015,2019/11/20閲覧
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/35225/8/Chapter 7.pdf
power-ele.hatenablog.com(2019/11/20閲覧)