パワエレ学生の備忘録

電気電子,パワエレ(特にスイッチング電源やモータ),制御工学や趣味に関すること,を赴くままに綴る,便所の落書きのようなところ/保有資格:第三種電気主任技術者,第一種電気工事士

【古典制御】安定判別法③(イレギュラー処理)

 前回の記事で解説したNyquistの安定判別法は,複素平面上で,虚軸上を辿り積分していくことが前提であった.

 しかし,虚軸上に極(特異点)が存在した場合,その点は積分不可能である.複素解析学ではこのような場合,その点を避けて通ることが定石であるが,右半平面の極として扱うか否かでその回避方法が変わる.

 つまり,虚軸上の極が安定か不安定かを議論する必要があるので,複素平面上に存在する極の性質について改めて,下図を用いて論ずる.

 

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様々に配置された極とインパルス応答

 

   さて,極の配置によってインパルス応答の性質も変わるわけであるが,左半平面に配置されたものについては明らかに減衰しており,BIBO安定であることが明らかである.また,虚軸を含まない,右半平面に配置された極については発散している.

 ところで,虚軸上に存在する点であるが,発散も収束もしていない(臨界減衰と呼ぶ).

 今調べている応答波形がインパルス応答のものであることを考えると,臨界減衰の応答が得られる虚軸上の極は不安定とみなすのが自然である.

※教科書の中には,虚軸上の極は安定であるとみなしていることもあるが,これについては回を改めて記述する

 

 したがって,もし虚軸上に極が存在したら,下図のように回避する.

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虚軸上の極を回避する閉曲線

  ちなみに,虚軸上に極を持つ伝達関数Nyquist線図は下図のようになる.今回は,

$$ G(s) = \frac{2s+1}{s^2+1} $$

をプロットした.

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虚軸上に極を持つ伝達関数

 \(\omega = -1, +1 \)で発散していることがわかる.この発散は,特異点に向かっていることを表している.

 このNyquist線図の流れは,以下の通り.

 \( (1, j0) \)の点からスタートして右上に発散していく.ここで特異点を左半平面側に回避しているので,逆説的ではあるが,\( (-1,j0) \)を囲むようにして左下から右上に進み,原点に向かう.原点から折り返して左上に発散していく.再度,特異点に近づくが,これも左回りに回避する.さらに右下から\( (1, j0) \)に戻る.この間に\( (-1,j0) \)の点を2回だけ回っている

 一方で,特異点は2つ存在するため,このシステムは安定であることがわかる.

 

 虚軸上に極をもつ,もっとも有名なシステムに,積分器がある.積分器は,

$$G(s) = \frac{1}{s}$$

で表される.これをNyquist線図に描画すると,

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積分器のNyquist線図

のようになる.\( -\infty \)から出発し,\( 0-0 \)に近づきながら発散していく.ここで重要になるのが,\(0+0\)にジャンプする際,どっち向きに回っているかである.

 先程の例では左側を回っていたので,今回もそのようにする.すると,\( (-1,j0)\)を囲むようにして1回だけ回ることになる.

 積分器自体の不安定極は1つであったから,このシステムは安定であるといえる.

 

 次回は,数学的に若干荒っぽかった部分の補遺や注釈を入れる.