便所の落書き

電気の知識を赴くままに...

サトシ「ピカチュウ,10万ボルトだ!!」は合法か(電気法令)

 少し前にこんなコピペがバズってた.

サトシ「いけピカチュウ!10まんボルトだ!」
ピカチュウ『高圧・特別高圧電気取扱特別教育を修了していますか?』
サトシ「してないです」
ピカチュウ「資格は?」
サトシ「電工2種なら…」
ピカチュウ「でしたら600Vまでですね」
サトシ「いけピカチュウ!600ボルトだ!」

果たしてそうなのか.

※結論は,無資格でも可能という解釈ですが,法律の専門家ではないのでこの記事をご覧になって変な点があるよって方はコメントください

 

 

※参考法令集

電気事業法(電事法)

電気事業法施行規則(電事施行規則)

電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)

電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)

電気工事士法(電工法)

電気工事士法施行規則(電工施行規則)

労働基準法労基法

労働安全衛生法(安衛法)

労働安全衛生規則(安衛規則)

 

さて,コピペを1行づつ見ていこう.

 

◯1行目

サトシ「いけピカチュウ!10まんボルトだ!」

電圧には3つの区分がある.

・電技省令二条

電圧は、次の区分により低圧、高圧及び特別高圧の三種とする。
一  低圧 直流にあっては七百五十ボルト以下、交流にあっては六百ボルト以下のもの
二  高圧 直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては六百ボルトを超え、七千ボルト以下のもの
三  特別高圧 七千ボルトを超えるもの

 よって,10まんボルトは特別高圧の区分に当たる.

 

◯2行目

ピカチュウ『高圧・特別高圧電気取扱特別教育を修了していますか?』

高圧・特別高圧電気取扱特別教育の法的根拠は以下にある.

・安衛法五十九条

事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない

3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない

・安衛規則三十六条(抜粋)

法第五十九条第三項厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

 (略)

四  高圧若しくは特別高圧の充電電路若しくは当該充電電路の支持物の敷設、点検、修理若しくは操作の業務、低圧の充電電路の敷設若しくは修理の業務又は配電盤室、変電室等区画された場所に設置する低圧の電路のうち充電部分が露出している開閉器の操作の業務

(略)

 (法とは労働安全衛生法のこと)

とある.特別高圧の充電電路を操作する業務に従事する場合は特別教育が必要になるのだ.

 サトシはそのような業務に従事しているのだろうか.

 この場合最も近いものが操作の業務に当たりそうであるが,これは指示(指揮)にあたる.

・安衛法六十条(抜粋)

事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
(略)

  もしサトシが労働者を指揮していたとするとこの教育を受講している必要があるが,ピカチュウは労働者ではないためこれも必要ない.

 

◯5,6行目

サトシ「電工2種なら…」
ピカチュウ「でしたら600Vまでですね」

 このやりとりはとんだ勘違いである.

 電工2種とは,正式には第二種電気工事士と呼ばれる資格で,根拠規定は以下である.

・電工法第一条

この法律は、電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする。

 ・同法第三条(抜粋)

 2  第一種電気工事士又は第二種電気工事士免状の交付を受けている者(以下「第二種電気工事士」という。)でなければ、一般用電気工作物に係る電気工事の作業(一般用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。以下同じ。)に従事してはならない。

 つまり,電気工事士とは電気工事に関する資格であり,取扱とは全く別なのである.

 

 ここまで長々とコピペを追ってきたが,これだけではコピペの誤解を解いただけで,本当に資格が必要ないと言い切れない.

 そこで,ひとつ,重要な事実を示そう.それは,ピカチュウは電気に関する法律では規制されないことだ.

 なぜか.

 電気に関する法律は電気事業および電気工作物の運用・維持・保守・工事に関する規制である.

 電気工作物とは以下で定義される.

・電事法第二条(抜粋)

十八  電気工作物 発電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物(船舶、車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう。

 工作物とはなにか.

・電技解釈第一条(抜粋)

この解釈において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号による。

二十二 工作物 人により加工された全ての物体

 以上よりピカチュウは電気工作物ではないことがわかり,法的に規制はされないのである.

 

 

 

とはいえ,ポケモンの世界では何かしらの規制ができていると考えるのが妥当だし,人や他人が所有する財物に危害を及ぼせば,刑事的および民事的責任についても問われることになるだろう.