パワエレ学生の備忘録

電気電子,パワエレ(特にスイッチング電源やモータ),制御工学や趣味に関すること,を赴くままに綴る,便所の落書きのようなところ/保有資格:第三種電気主任技術者,第一種電気工事士

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このページは色々知ったことについて,特に公開したい知見を雑多に書いていっています.主に,電気電子に関する記事が多いです.

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ステップ/ランプ入力に対する定常特性について

 下図のようなフィードバックシステムにおける定常特性を考える.

 フィードバックシステムの目標のひとつに,指令値に追従することが挙げられる.

 指令値の特性は現実的にステップ入力が最も多く,ランプ入力もシステムによってはあり得る.

 これらの指令値に対して出力が指令値に収束するためにはどのような条件が必要かを考える.

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フィードバックシステムのブロック線図

 

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PMSMにおける一般的なセンサレス制御の考え方

 PMSMのセンサレス制御手法は様々提案されているが,一般的にセンサレス制御の考え方は下図に集約されている.

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センサレス制御をフィードバックシステムとして考えたときのブロック線図
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【離散化・量子化】スイッチング電源をディジタル制御する際に気をつけること

 DC-DCコンバータは,主にオペアンプ回路で構成するアナログ制御に加えて,近年ではディジタル制御が注目されている.

 ディジタル制御はA/D変換により信号をサンプルホールドし,補償器はディジタルフィルタとして実現,PWM生成はディジタルPWM(DPWM)に置き換えられる.これらは一般的なマイコンであれば全て搭載されている機能であり,安価で制御パラメータの調整も容易で,開発環境も無料のものが多くなってきたのでアマチュアにも扱いやすい.

 ただディジタル制御が万能かと言われればそうではなく,離散化と量子化といった特有の現象がある.

 離散化は教科書でも取り上げられるが,量子化は無視するものとして考えられることが多い.

 今回は備忘録として,ディジタル制御における離散化,量子化の影響について考える.

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スイッチング電源におけるディジタル制御の構成図(電圧モード制御の場合)
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外乱オブザーバが与える安定性への影響について

 フィードバック制御系は下図のブロック線図で表現されることが多い.外乱成分\( D \)は,補償器\( G_{\rm c} \)と制御対象\( G_{\rm plant} \)の間に印加されていると考える.

 外乱成分は制御性能に悪影響を及ぼすため,極力排除されることが望ましい.

 しかし,外乱抑圧特性と雑音除去特性は,一般にトレードオフの関係である.

 そこで,\( D \)に対して,それを相殺する要素を与えることで,ループの安定性に影響を与えることなく外乱を除去することができる.下図の\( \tilde{D} \)がそれに対応し,この値は外乱を補償器出力\( U \)と制御対象出力\( Y \)から推定する.

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外乱とその推定値を含むフィードバックループ
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パワエレで用いる座標変換行列について

 モータ制御の勉強をしていて,α-β座標からd-q座標へ変換する回転行列の定義が数学の線形代数で登場する回転行列と逆だったので驚いた.

 忘れないようにメモしておく.

 

 まず,数学で登場する回転行列\(\bf{R}_{\rm m}\)は,

$$\bf{R}_{\rm m} = \begin{pmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{pmatrix}$$

で与えられる.

 一方で,モータ制御で用いる回転行列\({\bf R}_{\alpha d}\)は,

$$ {\bf R}_{\alpha d} = \begin{pmatrix} \cos \theta & \sin \theta \\ -\sin \theta & \cos \theta \end{pmatrix}$$

となっており,先程の定義とちょうど逆行列の関係になっている.

 

 これは,前者の行列は「ベクトル」を回転させているのに対して,後者の行列は「座標を回転させているからである.

 つまり,\({\bf R}_{\alpha d}\)により,座標を\(\theta\)だけ回転させることは,α-β座標において定義されたベクトルを\(-\theta\)だけ相対的に回転させていることになる.

 図で表せば,下図のようになる.左が座標系を回転させたもの,右がベクトルを回転させたものだが,両者は等価である.

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座標変換行列の解釈

 

周波数応答で考える制御特性

ある制御系についての特性を評価する場合,古典的なフィードバック制御系であれば,一巡伝達関数を調べることが一般的である.

一方,指令値から出力への閉ループ伝達関数を考えたほうが直感的に評価できるような気はする.

しかし,実際に考慮しなければならない特性は他にもあり,それらは閉ループ伝達関数から求めるには少し煩雑な手続きを経なければならない.

では一巡伝達関数を用いてどのように評価するのだろうか.

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フィードバック制御
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